特許の出願がデメリットになる場合もある?
知的財産権の保護は重要。とはいえ制度上のデメリットも
必ずしも特許を取得した方がよいとは限らない?
自分のアイデアや発明を、知的財産権を用いて保護することの重要性は言うまでもありません。知的財産権を他者に侵害されることで得るべき利益を損なってしまわないためにも、戦略的な出願・登録を行っておくことが大切です。とはいえ、どのような場面でも絶対に「知的財産」として登録、保護することが最も利益を守る方法なのでしょうか? 実は、必ずしもそうとは言えないケースもあります。
たとえば、これまでに誰も思いつくことのなかった、驚くようなアイデアや発明。ところが、そのアイデアを製品化するために特別な技術が必要かというと、必ずしもそうではないケースもあります。つまり、とても斬新ではありますが、内容さえ知ってしまえば簡単に再現することができる発明ということです。
特許の出願=発明の公開となることに注意!
このような発明をした場合、ビジネス的にはその内容を誰にも知られないことがベストかもしれません。ところが、それを保護するために特許出願をすると、特許法第64条に基づいて、出願から1年半後には発明の内容が公開されます。そのまま登録されて、特許法で保護されれば問題はありませんが、時にはさまざまな条件から最終的な設定登録がされないこともあります。これでは、権利を守るために出願を行ったはずが、保護はおろか発明を無償で公開してしまっただけになってしまいます。
発明が保護される有効期限にも注意が必要
登録から20年後には誰もが使えるようになる
また、特許権が認められ設定登録がされたとしても、出願から20年後にその有効期限が切れてしまいます。それはその時点で、競合他社が製品の開発を行う際に、特許権の切れた発明を利用できるようになることを意味します。これでは、自社の発明がかえってライバルを生み出すということにもなりかねません。技術的な再現が難しくない発明であればなおさらです。
秘密のノウハウとして守り抜く方法も
つまり、知ってしまえば誰にでも実現可能でも、その発想を思いつくこと自体が難しい発明の場合は、特許出願をしないという選択肢も事業戦略を練るうえであり得るということです。有名な話として、ケンタッキー・フライド・チキンのスパイスに関しての配合や、コカ・コーラの成分については特許出願がされていないことがあります。
これは、その配合や成分を他者が考えることはできないだろうという自信と、自社のブランド力への信頼からきているものと思われますが、配合などはその種類さえわかってしまえば、さほど難しい技術ではないことを示しているとも考えられます。このような、「外に出さない秘密のノウハウ」として活用されているケースもあるように、「知的財産」として保護した方がいいのか、それとも「企業秘密」として外部に知られないことが優先されるべきなのか、事業展開するなかでの自らの知的財産について、弁護士などの専門家と十分に検討し戦略を練ることも大切です。
目に見えない権利だからこそ、ライセンス契約は慎重に
ビジネスに有効な特許ライセンスの活用
自社の発明やアイデアでの特許取得を目指すという方法とは別に、第三者が権利を保有する知的財産を活用して事業を展開することもよくあります。他者が特許権を持つ発明や技術を利用することは、自社の製品開発にかかるコストの削減などにつながる有効な知材戦略のひとつ。こうしたケースでは、権利保有者との間でライセンス契約を結び、目的とする知的財産を法律の範囲内で適法に利用する事になります。
ところが知的財産とは「目に見えない・形のない」ものであるため、「目に見える・形がある」対象に利用料を支払って「借りる」契約とは、その条件や対応の仕方がかなり違ってくることに注意する必要があります。
実際の権利者でもライセンス契約が結べない場合も
目に見えないということは、借り受けたい知的財産を保有しているはずの相手が、本当に権利者なのかを容易に判断できないということです。たとえば、A社が製品をつくる際に第三者が特許権を持つ技術が必要だった場合、A社はその特許権を持つ個人や企業とライセンス契約を交わし、対価を支払ったうえで技術を利用します。ところが、ライセンス契約を交わしたはずのその相手が正式な特許権者ではなかったとすると…A社は何ら自覚もないままに他者が所有する権利を侵害してしまうことになってしまいます。
こうしたライセンス契約を巡るトラブルを予防するためには、契約を結ぶ相手の権利をきちんと確認することが大切です。たとえ実際の権利者であったとしても、すでに相手がその特許技術について他の第三者と独占的ライセンス契約を結んでいたり、特許権が担保設定されていたりすると、ライセンス契約は無効となります。また、特許権が個人でなく共有のものであれば、共有者の同意なくして契約を結ぶことはできません。
重要な契約を結ぶ前には専門家のチェックを受けておこう
知的財産権をめぐる契約には多くの法律が関わるため、多種多様な法的トラブルが起こる可能性があります。とくに事業全体に大きな影響を及ぼすような契約や、これまでに経験したことがないようなライセンス契約を結ぶ際には、予測していなかった事態を招かないように、あらゆる可能性を想定しておくことが重要です。もちろんそうしたケースでは、知的財産の扱いに慣れた弁護士をはじめ、専門家への相談も検討してみましょう。
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