労働審判制度とはどんなもの? 弁護士に依頼するメリットや費用相場も解説!

労働審判制度

労働審判制度の利用が増えている?

労働審判制度は、近年増え続けている労働問題の申し立て制度です。2016年は、労働審判申立件数が3,679件にもなりました(日本弁護士連合会「弁護士白書 2016年版」より)。終身雇用制が崩壊し、長引く不況で従業員の会社への帰属意識は低く、逆に権利意識は高まっています。そうした現代では、元従業員が以前勤務していた会社に対して退職後に未払いの残業代や退職金を請求したりすることは珍しくありません。労働審判はそんな労使を巡るトラブルを、通常の訴訟よりも短期間で円滑に解決するために登場した制度です。

労働審判制度の手続きとは?

通常訴訟より柔軟な紛争解決方法

労働審判制度とは、原則3回以内の期間で進める紛争解決のための制度。使用者である会社と労働者である従業員等のトラブルを「紛争の実情に即して」解決を図る方法で、通常の民事訴訟のように事実認定や法の適用などによって厳しく判断していくというよりも、実情に合わせて結論や和解策を柔軟に出していこうというものです。

労働者である従業員から労働審判の申立てをされた場合、使用者である会社側は数十万円から数百万円の和解金を請求されるケースが大半です。通常訴訟との大きな違いは、従業員が「お金で和解したい」という気持ちがあること。また、会社側も通常訴訟に持ち込まれると、訴訟対応にかかる費用や長期間の拘束など、会社が受けるダメージが大きいので、ここで和解を目指したいところです。

そうした労使双方の事情もあり、労働審判に申立てられた案件のうち、調停または審判で約8割が解決されています。

労働審判の期間の多くは70日以内

労働審判制度は3回の期間で行われることもあり、一般的には、その多くが70日以内で終了するとされています。2013年に4つの地方裁判所で調停または審判で終局した労働審判事案452件を見てみると、その期間が3ヵ月以内のものが全体の約70%を占め、6ヵ月以内にはほとんどの事案が終局し解決されていました(「労働局あっせん、労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析」2014年独立行政法人労働政策研究・研修機構による)。このように短期間で結論が出せるのも、労働審判制度の特徴です。

労働審判制度はどのように進められる?

口頭での主張が大半

労働審判制度は、労働審判官1名と労使双方の専門家である労働審判員2名の合計3名からなる労働審判委員会によって進められます。個別の労働紛争を3回以内の期日で審理し、調停を試みます。調停がまとまらなければ、労働審判の結論を出していきますが、書面で提出するのは「申立書」と「答弁書」のみで、当事者の主張はそのほとんどが口頭で行われます。

また、労働審判の調停には、通常の民事訴訟における和解と同様、当事者に対する強制力があるのが特徴です。調停がまとまらず審判となった場合も、通常の民事訴訟の判決と同じように法的効力があります。なお、当事者が出された審判に異議があれば、2週間以内に異議申し立てを行い、通常の民事訴訟へと移行することができます。

労働審判のメリット~労働審判に向くトラブルとは?~

不当解雇や雇止めなどの案件が約半分

このような労働審判制度ですが、この制度で解決するのに向いているトラブルと向いていないトラブルがあります。実際に労働審判で扱われているのは、「不当解雇」や「雇止め」についてのトラブルが全体の約半数を占めています。

解雇については、通常訴訟で争うと解雇無効となることが多く、従業員は職場に復帰することができます。けれども、実は従業員のほうも「それほど会社に戻りたいわけではない…」という心情で「和解金などで決着をつけたい」と考えるケースも少なくありません。労働審判で柔軟な話し合いをすることで、会社は従業員との和解に向けた手続を進めることができるのです。

労働審判制度のデメリット~向かないトラブルもある~

整理解雇やパワハラは向かない?

逆に、労働審判制度に向かないトラブルにはどのようなものがあるのでしょうか。たとえば、労使双方の言い分があまりにも異なる場合は、3回以内の期日で合意に至ることが難しく、審判に異議が出て通常の訴訟へと移行することになってしまいます。

また、整理解雇やパワハラ、セクハラといった紛争など複雑できちんとした解決を求めている事案は、労働審判での合意は向かないかもしれません。そうしたケースでは、労働審判制度の短期間の期日がデメリットに。つまり、3回の審理で判断ができそうにないものは、労働審判による解決が難しいと考えたほうがいいでしょう。

労働審判にかかる費用はどのくらい?

和解金と弁護士への費用がかかる

会社が労働審判の申立てをされた場合、従業員と和解するには和解金を支払うことになります。和解金は十数万円から数百万円までと事案によって幅があります。たとえば、残業代未払いで請求された金額が500万円であっても、調停で会社側の主張をしていくことで最終的には半額以下になるケースもあります。こうした和解金を調整するためにも、労働審判では労働問題に強い弁護士に依頼するのが望ましいでしょう。

労働審判で弁護士に支払う費用には、着手金、報奨金などがあります。それぞれ30万円以上もしくは、和解支払金の15%前後が相場です。とはいえ、申立ての内容や法律事務所によっても費用は異なりますので、依頼の前にはきちんと見積りをとることが大切です。

従業員や元従業員から思わぬ申立てを受けても、通常訴訟へと持ち込まず労働審判で和解できれば、会社へのダメージも少なく、短期間で終わらせることができます。費用はかかるものの、申立てを受けたらできれば法律のプロである弁護士の力を借りて、会社側に有利な労働審判で紛争解決を目指してください!

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