会社の破産~破産の影響と決断する際の判断ポイント
会社を経営していると、良いときも悪いときもあります。経営努力で改善の方法がないときには、最終手段として破産せざるを得ないケースがあります。破産は重大な決断ですが、どのような基準で判断すれば良いのでしょうか?今回は、破産の影響と決断の際の判断ポイントを解説します。
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破産が必要になるときは?
企業経営が悪化したら、必ず破産が必要なのか?
会社の経営状態が悪化してきたら、普通は経営努力でどうにか乗り切ろうとするものです。しかし、それではどうにも乗り切れないことがあります。その場合、早めに対処をすべきです。放っておくと、状況がどんどん悪化していくためです。
それでは、具体的にどのような対処方法をとれば良いのでしょうか?
破産するしかないのかが問題
この場合、いきなり「破産」が必要だというわけではありません。破産するまでには、通常いくつかのステップがあります。他の手段を検討してもどうしようもない場合、最終手段として破産を選択する、ということです。以下では、破産と倒産の違いや、破産と並行して検討できる、各種の倒産手続きについて、見ていきましょう。
倒産と破産の違い
一般的に、会社経営が悪化したら「倒産」すると言われます。破産と倒産は、同じことだと思われていることがありますが、実は異なる概念です。
「倒産」は「破産」より広い概念です。破産も倒産の1場面だということです。そこで、たとえば新聞などで企業が「倒産」したと書いてあることがありますが、そのようなとき、その企業は「破産」しているのかもしれませんが、破産以外の方法で倒産しているかもしれません。
このように、企業経営が悪化したら、破産をするのか、他の方法で整理をするのかを検討する必要があります。
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倒産とは
具体的に「倒産」とは、どのような状態を言うのでしょうか?
倒産は、企業経営が悪化して、何らかの整理手続が必要になった状態です。一般的には、2回手形の不渡りを出すと、銀行取引を停止されるので、その時点で「倒産」と言われることもあります。ただ、その時点ではまだ具体的な倒産手続きをしていません。
倒産するときの具体的な手続きは、2種類に分類することができます。1つは私的整理、2つ目は法的整理です。
私的整理と法的整理
倒産を分類した「私的整理」と「法的整理」は、それぞれどのようなものなのでしょうか?
私的整理とは
私的整理というのは、債務者が裁判所を介さずに話合いによって債務を整理する方法です。個人の任意整理と同じだと考えると良いでしょう。私的整理を行うときには、弁護士に間に入ってもらい、それぞれの債権者と個別に交渉をして、債務を減額してもらったり、支払期間を猶予してもらったりします。
私的整理によって解決できるのであれば、企業は清算をせずに、そのまま経営を続けることができますし、取引先との関係も維持できます。
私的整理は、企業を再生するための債務整理手続です。
破産は、法的整理の1種
これに対し、法的整理とは、裁判所を使った債務整理の方法です。私的整理では、それぞれの債権者の同意を取り付けないと解決ができないので、多額の債務がある場合や、反対する債権者が多い場合などには手続を進めることができません。これに対し、法的整理では、裁判所の関与によって強制的に整理を進めていくことで、債務を減額したり免除してもらったりすることができるのです。
破産は、こうした法的整理の1種です。
法的整理の2つの種類
破産は法的整理の1種ですが、法的整理にもいくつもの種類があります。以下で、それぞれをご紹介します。
再建型
まずは、債権型の倒産手続があります。債権型というのは、企業を消滅させるのではなく、存続をさせて経営を維持するための債務整理手続です。
具体的には、民事再生法による再生手続きと、会社更生法による再生手続きがあります。どちらの場合にも、債務を圧縮して、その債務を返済することにより、企業が再生していく方法をとります。以下で、民事再生と会社更生のそれぞれについて、見ていきましょう。
民事再生
民事再生は「民事再生法」という法律によって定められた企業の再生手続きです。これは、企業再建の原則的な手続きです。どのような法人でも利用することができるので、株式会社以外でも利用可能ですし、事業規模も問われません。個人が債務整理をするときによく利用される「個人再生」は、民事再生に認められる特則なので、その1種です。
民事再生を裁判所申し立てると、裁判所によって「監督委員」が選任されます。そして、監督委員の指導監督のもとで、債務者自身が再生計画を立てます。再生計画が裁判所によって認可されたら、債務者は、その内容に従って支払を続けていくことにより、債務の問題を解決することができます。
会社を清算する必要はありませんし、経営をそのまま継続することができます。
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会社更生
次に、会社更生手続きについて見てみましょう。これは、会社更生法という法律に定められた企業再建のための手続きで、民事再生の特則です。
会社更生を行うときにも、裁判所に申立をして債務を減額してもらい、会社を維持しますが、会社更生手続の場合には、裁判所が選任した「更生管財人」が主導して、更生手続を進めます。債務者(更生会社と言います)の役員が、自分で再生計画を立てて、自分で会社経営を続けることができません。役員は、基本的に交代しなければならないためです。現経営者が自分で経営を続けたい場合には、会社更生法によっては解決できません。
また、会社更生法を利用すると、現在の株式は失効して、新たなスポンサーが全ての株式を取得することとなります。そこで、同族会社やオーナー社長が多い中小企業の場合などには、会社更生手続きは不向きです。どちらかというと、株式会社の中でも大きな会社が利用することが多いです。
会社更生法を利用することができるのは、株式会社のみです。それ以外の法人や個人は利用することができません。
特定調停について
企業の再建型債務整理手続で、中小企業でも利用しやすい方法として、特定調停があります。特定調停というと、個人が利用するイメージが強いかもしれませんが、「中小企業向けの特定調停スキーム」があります。これは、一定以下の規模の株式会社が利用できる手続きで、債権者との交渉により、債務の圧縮をする手続きです。
スキームの利用のためには、予め債権者と交渉をして、債務の圧縮についての同意を取り付けておきます。いわゆる根回しの交渉です。そして、裁判所に特定調停の申立をして、その場で債権者に同意をしてもらい、調停を成立させて債務を整理行います。
特定調停スキームを利用すると、弁護士費用の補助なども受けられるので、企業を再生したいときには利用するメリットが大きいです。関心がある場合には、一度弁護士に相談してみることをお勧めします。
清算型の倒産手続
次に、清算型の会社の倒産手続を確認していきましょう。破産も、清算型整理手続の1種です。
清算型の倒産手続は、会社の財産と債務を整理して、会社を消滅させる方法です。そこで、清算型の倒産手続を利用すると、会社は消滅してしまいます。会社を維持したい場合には、清算型の手続きを利用することはできません。清算型の倒産手続には、特別清算と破産の2種類の方法があるので、以下で、それぞれについて、ご説明します。
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特別清算とは
特別清算は、会社法に定められた会社清算のための手続きです。会社に債務超過のおそれがある場合などに利用することができます。
特別清算を裁判所に申し立てると、「特別清算人」が選任されて、その人が主導して、会社の清算手続きを進めていきます。具体的には、財産の換価や債権者への配当の作業を行います。そして、それらの手続きが終了したら、清算手続きが終了します。
破産とは
破産は「破産法」という法律に定められる会社清算のための手続きです。会社が「支払不能」または「債務超過」である場合に利用することができます。
破産するときにも裁判所へ申立を行いますが、申立をすると「破産管財人」が選任されます。破産管財人に就任するのは、通常その裁判所の管轄内の弁護士です。
破産管財人は、破産会社の財産を管理して、現金化していきます。同時に債権調査を行い、債権者とそれぞれの債権額、債権の種類を明らかにしていきます。すべての財産を換価したら、債権者に対して配当を行います。このようにしてすべての財産と債務を整理したら、破産手続が終了します。
破産をすると、企業は清算されるため、消滅します。破産後、その企業を引き続き経営していくことはできません。
特別清算と破産の違い
特別清算と破産は、よく似ていると感じた方が多いのではないでしょうか?確かに、どちらも、企業を清算するための手続きですが、これらにはいろいろな違いがあります。そこで、以下では、両者の違いを確認していきましょう。
根拠法が違う
まずは、根拠法が異なります。特別清算は、会社法に定められた、会社の清算手続きです。これに対し、破産は「破産法」という法律によって定められた清算手続きです。会社法は、会社の組織や手続きなどを全般的に定めた法律で、清算手続きに特化したものではありませんが、これに対し、破産法は、破産手続きに特化した法律です。
開始要件が違う
次に、手続きを開始するための要件が異なります。特別清算を行うことができる会社は「清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある場合」または「債務超過の疑いがある場合」です。つまり、債務超過の疑いがあって、通常の清算方法では清算がうまくいかないおそれがある場合には、特別清算を利用することができるのです。
これに対し、破産は「支払不能」または「債務超過」の場合に利用できます。「債務超過の疑いがある」とか「支払不能になるおそれがある」程度では利用できないのです。このように、開始要件は、破産手続の方がかなり厳しくなっています。特別清算ができても、破産ができないということもあり得ます。
利用できる債務者が違う
特別清算を利用することができるのは、株式会社のみです。それ以外の会社や個人が特別清算することはできません。これに対し、破産はどのような法人でも個人でも利用することができます。そこで、たとえば有限会社や合資会社、合名会社、個人事業者などが清算したければ、破産するしかありません。
債務者自身が手続を進められかどうかが違う
特別清算を進めるときには、「特別清算人」が選任されます。これに対し、破産するときには「破産管財人」が選任されます。両方とも、財産を換価して債権者に配当を行い、企業の清算手続きを進めていきます。
しかし、この両者は、誰が就任するかと言う点が大きく異なります。特別清算人に就任するのは、清算会社の代表取締役であることが多いです。そこで、特別清算をするときには、代表者自身が自分で手続を進めていくことができます。これに対し、破産管財人に就任するのは、申立裁判所の管内の弁護士です。そこで、破産をするときには、完全に第三者である破産管財人弁護士に、清算の手続きを任せてしまうこととなります。
債権者の同意の要否が違う
破産と特別清算では、債権者の同意の要否が異なります。特別清算を進めるときには、手続きの各場面において、債権者の同意が必要になる場面が多いです。同意がなければ清算手続きを進められなくなってしまうこともあります。
これに対し、破産手続を進めるときには、基本的に債権者の同意は不要です。破産の要件を満たしていて、適式に財産換価と配当の手続きを進めている以上、債権者が破産手続を止めることはできません。
そこで、企業の清算に反対している債権者が多い場合などには、特別清算より破産手続の方が向いています。
ケースによって、適切な倒産手続きを選択しよう!
以上のように、会社を清算するときには、特別清算と破産の2種類の方法がありますが、どちらの方法が向いているのかは、ケースによって異なります。迷ったときには、企業法務に強い弁護士に相談しましょう。
破産するかどうかの判断基準
ここまで、会社が倒産するときに利用することができるいろいろな選択肢を解説してきました。会社経営が危なくなったときには、破産以外にもたくさんの選択肢があることを理解していただけたと思います。
破産手続きを選ぶべきかどうか迷ったら、以下の点を判断基準にすると良いです。
再生の可能性があるのか
まずは、企業が再生できる可能性があるのかどうかを検討しましょう。赤字になっていても、一時的なものなら経営努力で改善することも可能です。債務超過になっているのかなっていないのか、なっているとしたらどの程度なのか、解消できる見込みがあるのか無いのかなどを検討しましょう。
債務超過になっていても、額がそう多くはなく、事業内容に将来性がある場合などには、再建型の事業再生手続きを利用することにより、企業を蘇らせることも可能です。その場合、破産する必要はありません。反対に、債務超過の程度が大きく、もはや減額してもらっても支払を続けていける可能性がない場合や、経営努力をしても売上げ自体が上がらず、圧縮してもらった債務の返済の可能性がない場合などには、破産するしかありません。
守るべき資産や価値があるか
破産をすると、企業は完全に消失してしまいます。財産は投げ売りされて債権者に配当されてしまいますし、ブランドや信用などの企業の「見えない価値」も、失われます。そこで、企業に守りたい資産や価値がある場合には、再建型の事業再生を検討すべきです。
民事再生なら、経営者自身が残って経営に携わっていくことができますし、会社更生でも、会社の価値自体は残すことができます。
債権者の同意が得られるか
破産すべきかどうか検討するとき、債権者の同意を得られるかどうかも重要です。破産以外の倒産手続きは、債権者の同意を要するものが多いからです。
たとえば、民事再生でも、再生計画を認可してもらうために一定以上の債権者の同意が必要ですし、特定調停や私的整理なら債権者全員の同意が必要です。特別清算でも、債権者の同意がないと手続をスムーズに進めることができません。結局、債権者の同意が得られないなら、最終的に破産せざるを得なくなってしまう例も多いです。
そこで、大口の債権者やたくさんの債権者が反対している場合には、破産以外の選択肢を選ぶことが難しくなることがあります。その場合には、破産手続を選択するしかないでしょう。
私的整理か法的整理か
破産を検討するときには「私的整理」か「法的整理」かを選ぶ視点も必要です。私的整理の場合には、裁判所を利用せずに、債権者と直接交渉を行います。そこで、手続きも簡略ですし、債権者に対する迷惑も最小限で済みます。
大々的に倒産手続きをしないので、関係者以外の取引先には、債務整理を知られずに取引を続けることも可能です。金融機関や取引先との関係を悪化させないで手続きすることができますし、信用も失いにくいです。そこで、債務超過の度合いが小さく、債権者との話合いによって解決ができそうな場合には、まずは私的整理を検討してみるのも良い方法です。
ただ、私的整理で圧縮できる債務の範囲に限度がありますし、基本的に債権者全員による同意が必要です。そこで、同意してもらえない債権者がいると、法的整理の方が向いています。
自主的に手続きしたいか管財人に任せたいか
企業の倒産手続を選ぶとき、自主的に手続を進めたいか、管財人に任せてしまいたいか、という視点も必要です。再建型の倒産手続でも清算型の倒産手続でも、自主的に手続を進められるものと、管財人に手続きを任せてしまうものがあるためです。
たとえば、私的整理や特定調停、民事再生なら現経営者主導で再生できますが、会社更生なら更生管財人が手続を進めます。特別清算ならもとの経営者が清算手続きを進められますが、破産なら破産管財人に手続きを任せてしまいます。自分で手続を進めると、会社の処分を自分で決められるメリットはありますが、債権者や裁判所からいろいろな指摘をされますし、煩雑ですから、デメリットもあります。
清算を行うときには、結局会社はなくなるのですから、無理に自分で進める特別清算手続きよりも破産手続の方が楽に進められるでしょう。
個人保証しているかどうか
次に項目で詳しく説明をしますが、会社の代表者が会社の債務を個人保証している場合には、会社が倒産手続を利用することによって、代表者の個人資産から支払をしなければならないケースがあります。そこで、個人保証をしているときには、利用する手続きを慎重に選ぶ必要があります。
たとえば、破産をすると、確実に代表者に責任が及び、代表者も一緒に破産しなければならなくなります。これに対し、私的整理や民事再生なら、代表者も一緒に再生をすることも可能ですし、特別清算でも、代表者を救済するための措置があります。そこで、個人保証をしている場合には、こうした代表者個人に対する影響が小さい手続きを選択するのも、1つの方法です。
破産による影響
「破産」というと、大変なことが起こるイメージがあるものですが、実際に破産をするとどのような影響が及ぶものなのでしょうか?以下で、見てみましょう。
会社がなくなる
一番大きな影響は、会社がなくなることです。個人が破産しても個人自身が消えることはありません。破産後も、生きていくこととなりますし、新たに財産を作って再生していくことなども可能です。しかし、会社の場合には、破産によって清算されると、完全に消滅します。破産後、同じ会社を経営することはできません。
会社が持っていた資産もブランドも信用も、価値がすべて失われてしまうため、破産するときにはそれなりの覚悟が必要です。
代表者はどうなるのか?
破産するときに、「代表者にどのような影響が及ぶのか」を心配される方が多いです。破産すると、代表者の財産まで無くなるのでしょうか?
この点、そのようなことはありません。破産は、「人」単位で行うものですが、法人と個人は別の「人」だからです。会社の債務を代表者が支払う必要もありません。
ただし、会社が破産するとき、実際には代表者に責任が及ぶケースが多いです。それは、代表者が会社の債務を個人保証しているためです。保証人は、本人(この場合は会社)が支払をしなくなったときに、代わりに支払をしなければならないため、企業が破産をすると、代表者が保証債務の履行をしなければなりません。その場合、代表者の自宅などの個人資産から支払をしなければならないので、大変大きな影響があります。
連帯保証人だけではなく、連帯債務者となっている場合も同じことが起こります。
代表者が債務を負うときの破産手続き
代表者が会社の債務の連帯保証人や連帯債務者となっていて、会社が破産すると代表者に責任が及ぶ場合には、代表者も一緒に破産しなければならないことが多いです。
この場合、会社と代表者は、同時に破産することができます。法人と個人の破産手続は一応別なのですが、この場合、「セット」で取り扱われて、同時進行で手続きが進んでいきます。破産管財人も同じ人になり、管財人の予納金も、1件分の20万円(ただし、最低額)で済むので、安く済みます。
会社が破産をするときの代表者の対応方法については、慎重に検討すべきなので、迷ったときには弁護士に相談しましょう。
破産を検討しているなら、まずは弁護士に相談を!
今回は、会社の破産とその影響、会社が破産すべきかどうかの判断基準について解説しました。破産をすると、会社の価値や財産はすべて無くなってしまいます。その代わり、すべての債務を帳消しにしてもらえるという絶大な効果があります。
代表者が連帯保証人になっていることもよくありますが、その場合、会社が破産しても良いのかどうか、慎重に検討する必要があります。自分だけで決めるのは難しいことが多いので、債務の問題でお悩みの場合には、まずは企業法務に強い弁護士に相談することをお勧めします。
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