下請法の規制対象となる取引の4類型を知っておこう
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さまざまな取引が規制の対象になります
下請というと、製造業を思い浮かべがちですが、規制を受けるのはそれだけではありません。対象となる取引内容は「製造委託」、「修理委託」、「情報成果物作成委託」、「役務提供委託」と、大きく4つに分けられており、製造業からサービス業まで多岐にわたっています。
製造委託とは
物品を販売している会社や、製造している会社が、規格、品質、形状、デザイン、ブランドなどを指定して、社外に物品の製造や加工を依頼することを「製造委託」といい、以下の4つのタイプがあります。
1.物品の販売を行う会社が、その物品や部品の製造を社外に委託する場合
〈例〉
- デパートやスーパーが、食品メーカーにプライベートブランド商品の製造を委託
- 自動車メーカーが、部品メーカーに自動車部品の製造を委託
- 出版社が印刷会社に、雑誌や書籍などの印刷を委託
2.物品の製造を行う会社が、その物品に使用する部品などの製造を社外に委託する場合
〈例〉
- 金属製品メーカーが、製造に使用する金型の製造を金型メーカーに委託
- パソコン製造メーカーが、パソコンに使用する部品の製造を部品メーカーに委託
3.物品の修理を行う会社が、その修理に必要な部品などの製造を社外に委託する場合
〈例〉
- 家電メーカーが販売した製品の修理用部品の製造を部品メーカーに委託
4.自社で使用・消費する物品を自社で製造している会社が、その物品や部品の製造を社外に委託する場合
〈例〉
- 製品運送用の梱包材を自社で製造しているメーカーが、梱包材の製造を社外に委託
製造とは、原材料に何らかの工作をして新たな製品を作り出すことです。また、加工とは、原材料に何らかの工作をして、新たな価値をつけることを言います。ですから、1で例に挙げた印刷業は製造委託に当たります。
修理委託とは
物品の修理を行う会社が、その修理を社外に委託すること。また、自社で使用している物品の修理を自社で行っている会社が、その一部を社外に委託することを「修理委託」と言います。これには2つのタイプがあります。
1.物品の修理を請け負う会社が、社外にその修理の一部、または全てを委託する場合
〈例〉
- 自動車ディーラーが自動車の修理を修理会社に委託
- 家電メーカーが家電の修理を修理会社に委託
2.自社で使用する物品の修理を自社で行っている会社が、その一部を社外に委託する場合
〈例〉
- 運送会社が利用している荷物用リフトの修理を修理会社に委託
- 工場の機械を自社で修理している部品メーカーが修理の一部を修理会社に委託
修理とは、壊れたり傷んだりして、本来の機能を失った物品に手を加え、再び使用できるようにすることを言います。つまり、本来の機能が正常に働いている時に行われる「点検」や「メンテナンス」は修理委託の対象とはなりません。「点検」や「メンテナンス」は、役務提供委託に含まれますので、注意してください。
情報成果物作成委託とは
ある会社が業務として行っている情報成果物の作成を社外に委託することを「情報成果物作成委託」といいます。
情報成果物とは…
- テレビゲームのソフトや会計ソフトなどのプログラム
- 映像や音声、その他音響で構成される映画やアニメ、テレビ番組
- 文字や図形の結合、または色彩の結合により構成される設計図やポスター
「情報成果物作成委託」には、以下の3つのタイプがあります。
1.情報成果物を販売する会社が、その情報成果物の作成を社外に委託する場合
〈例〉
- テレビ局が番組制作会社に番組の制作を委託
- 家電メーカーが製品説明書の作成をマニュアル作成会社に委託
- アパレルメーカーがデザイン会社に衣料品のデザインを委託
2.情報成果物の作成を請け負う会社が、情報成果物の作成に関する作業を社外に委託する場合
〈例〉
- 建設会社が請け負った建築設計図面の作成を建築事務所に委託
- 番組制作会社がテレビ番組の脚本を脚本家に委託
3.自社で使用する情報成果物を自社で作成している会社が、その情報成果物の作成を社外に委託する場合
〈例〉
- ソフトウェア会社が自社向け経理ソフトの作成を別のソフトウェア会社に委託
- 広告会社がコンペ提出用資料の作成をデザイン会社に委託
役務提供委託とは
役務(サービス)の提供を行う会社が、その役務を社外に委託することを「役務提供委託」といいます。
〈例〉
- 運送会社が請け負った運送業務のうち、一部の経路を別の運送会社に委託
- 化粧品メーカーが顧客サービス代行会社にコールセンター業務を委託
ちなみに、建設業を営む会社が請け負う建設工事は、役務には含まれません。建設工事の下請については、下請法と類似した規制のある建設業法が適用されることになります。
自社の取引に下請法は関係がないと思っていませんか?
ここまでに挙げた通り、下請法ではさまざまな取引が規制の対象とされています。ですから、重要な取引先から不当な要求を受けた際には、「当社に下請法は関係ないだろう」などと勝手な判断をせず、できれば専門家である弁護士のアドバイスを受けてください。
公正な取引を実現するために
もちろんベストな解決は、取引先との関係を維持しつつ公正な取引を実現すること。企業法務に強い弁護士であれば、そのために有効な解決策を提示してくれるはずです。
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