親事業者の4つの義務と11の禁止行為
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親事業者が守らなくてはならない義務と禁止行為とは
他の会社や個人に仕事を発注する際、自社が下請法の適用となる親事業者に該当する場合は、事業者が守らなくてはならない義務と禁止行為が定められています。ここでは、4つの義務と11の禁止行為について説明します。
親事業者が守らなくてはならない4つの義務
1.書面の交付義務
口頭での取引は、さまざまなトラブルの原因になります。これを防ぐため、親事業者は下請事業者に発注する際、発注の内容を具体的に記した書面を交付しなければなりません。発注後、すぐに書面を交付しないと、罰金を科せられることになります。
記載しなければならない内容は、法律で決められています。該当する項目は、あらかじめすべて決定しておいてください。
発注書面に必要な記載事項
a | 親事業者と下請事業者の名称 |
---|---|
b | 委託をした日 |
c | 下請事業者の給付内容(品名・規格など) |
d | 下請事業者の給付を受領する期日(納期) |
e | 下請事業者の給付を受領する場所(納入場所) |
f | 親事業者が給付の内容を検査する場合は、検査を完了する期日 |
g | 下請代金の額(算定方法による記載も可) |
h | 下請代金の支払期日 |
i | 手形を交付する場合は、手形の金額や満期 |
j | 一括決算方式で支払う場合は、金融機関名、貸付けまたは支払可能額など |
k | 電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額と満期日 |
l | 原材料などを有償支給する場合は、品名、数量、対価、引き渡しの期日、決済期日と決済方法 |
書面の方式は決められていませんので、取引内容に応じた発注書面を作成しましょう!
2.支払期日を定める義務
急な支払日の変更や遅延は、下請事業者の経営悪化を招きます。親事業者は、下請事業者と合意した上で、支払の期日を定めなければなりません。また、発注した物品を受領した日から60日以内で、できるだけ短い期間にしなくてはなりません。
3.取引記録の書類作成や保存の義務
親事業者の違反行為に対して注意を促すため、また公正取引委員会や中小企業庁による調査や検査に役立てるため、取引記録の書類を作成し、保存しておかなければなりません。
給付内容や、下請代金の金額など取引に関する記録を書類にし、2年間保存することが義務付けられています。
4.遅延利息の支払義務
親事業者が、支払期日までに下請代金を支払わなかった場合、親事業者は下請事業者に対して、遅延利息を支払わなければなりません。
遅延利息は、受領日から60日が経過した日から加算されます。この日から実際に支払が行われるまで、年14.6%の遅延利息が発生します。
親事業者に禁止されている11の行為
1.受領拒否
下請事業者に責任がないのに、注文した物品などの受領を拒むこと。
2.下請代金の支払遅延
下請代金を受領日から60日以内のあらかじめ定めた期日までに支払わないこと。
3.下請代金の減額
下請事業者に責任がないのに、注文した時に決めた下請代金を減額すること。
4.不当な返品
支払い事業者に責任がないのに、受け取った物品を返品すること。
5.買いたたき
類似品の市場価格に比べ、著しく低い下請代金を定めること。
6.物品の購入やサービス利用の強制
親事業者が指定する物品を無理やり購入させたり、必要のないサービスに加入させたりすること。
7.報復措置
親事業者の不正行為を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由に不利益な扱いをすること。
8.有償原材料などの対価の早期決済
親事業者が有償支給した原材料の代金を、下請代金の支払日より早く支払わせること。
9.割引困難な手形の交付
代金の支払う際、一般の金融機関などで割引できない手形で支払うこと。
10.不当な経済上の利益提供の要請
下請事業者に金銭やサービスを不当に提供させること。
11.不当な給付内容の変更、やり直し
下請事業者の負担で、注文の取消や内容の変更を行ったり、受領した後にやり直しや追加作業をさせたりすること。
違反行為によって企業の信頼がゆらぐことも
違反企業の社名や違反内容は世間に知られてしまう?
違反行為が認められれば、公正取引委員会や中小企業庁から勧告や指導を受けることになります。また、公正取引委員会から社名や違反内容も公表されますので、企業イメージの悪化や企業の信頼損失につながることも…。自社が親事業者に該当する場合は、これらの禁止行為をしっかり確認しておきましょう。
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