売掛金の支払いを確実なものにするための契約

話し合い

相手に支払能力に合わせて新たに契約を結ぶ

改めて契約を結ぶことでトラブルの解決を図る

たとえば、あなたの会社が、とある会社に10万円の商品を販売したとします。ところが相手の会社は代金を支払ってくれません。あなたの会社は商品を失ったのに10万円の現金を得ていないわけです。

ここですぐに法的手段に訴えることもできます。しかしながら、裁判となると時間もお金も必要になってきます。そこで、裁判という最終手段をとる前に検討しておきたい方法を2つご紹介します。

債務承認弁済契約を結ぶ

弁済方法をあらためて定める契約

債務承認弁済契約とは、当事者同士が債権・債務の内容を再確認し、改めて弁済方法などを定める契約です。前述のたとえでいえば、こちらに10万円の債権が、相手に10万円の債務があることを確認し、その弁済方法を決めるわけです。

支払いを分割にすることも多い

そもそも代金を支払わないということは、相手に支払能力がない可能性があります。「まとめて10万円を用意することは厳しいが、1万円なら用意できる」という例も多くあります。そこで、毎月1万円ずつ10回にわたって返済というように、そのように債務承認弁済契約を結べば、すぐにではなくても債権回収ができるわけです。

債務承認弁済契約は、こちら側の妥協できる部分と、相手が支払える範囲を考慮して、互いに納得できれば、債権回収の有効な手段となるでしょう。

準消費貸借契約を結ぶ

債権・債務を金銭の貸借に切り換える

債務承認弁済契約と非常に似ていますが、準消費貸借契約という方法もあります。これは、あなたの会社が、相手の会社に10万円を貸し付けたことにする契約です。もともとは金銭などの貸し借り(消費貸借)ではなかったものが、消費貸借になるので「準」が付いています。商品の売買取引だったものを、金銭の賃借にするわけです。

この場合、相手にお金を貸したことにするわけですから、債務承認弁済契約同様、どのように返済していくのかも定めて契約する必要があります。

債務承認弁済契約・準消費貸借契約のメリット1

何口もある債権を1つに

新たに債務承認弁済契約や準消費貸借契約を結ぶメリットの1つは、売掛金をまとめられることです。取引が10万円の商品1点というわけではなく、販売した商品が10種類あり、販売数は商品によってまちまち、値段も種類によって違う…。そうした場合、仮に1つの商品代金だけ回収できても、それが何のものだったか、管理するだけでも大変です。

そこで債務承認弁済契約や準消費貸借契約を結べば、これまでの売掛金を1つにまとめて整理することができるわけです。

債務承認弁済契約・準消費貸借契約のメリット2

時効の延長にも利用できる

通常、商品の売買に関する債権の時効は2年です。しかし、あらためて債務承認弁済契約を結べば、契約書締結日から10年が時効となります。また、準消費貸借契約でも一般の場合は10年、商行為は5年が消滅時効となります。債権の時効が迫っていれば、債務承認弁済契約や準消費貸借に切り換えて、時効を延ばすという方法を採ることもできるのです。

債務承認弁済契約・準消費貸借契約を締結するには

相手が納得する必要がある

債権を債務承認弁済契約や準消費貸借契約に切り換えるには、相手方と契約を結ばなければなりません。契約書を用意し、互いに捺印して締結します。この際、契約書の内容に不備がないかをしっかり検討することが大切です。

理由はどうあれ、相手は代金を支払ってくれていないわけですから、新たな契約に関してさまざまな交渉も必要になってくるでしょう。こうした労力は並大抵のことではありません。

専門家の意見を要する場面も多い

支払いが滞っていた期間の利息を、返済金額に含めるのかどうか。債務承認弁済契約や準消費貸借契約に切り換えた後に、支払いの遅延が発生した場合はどうするのか。契約書の作成にあたっては、さまざまなことを想定する必要があります。

また、準消費貸借契約に切り換えた場合は売掛金と貸金で、消費税の扱いが違ってきますので、併せて注意しなければなりません。そのため、契約書の作成にあたっては、弁護士など、専門家に依頼することを検討しましょう。

債権が時効によって消滅しないために

金銭トラブルは放置せずに早めの対応が不可欠!

時間や経費、技術など、さまざまなことを費やして手にした債権が、時効によって消滅してしまうといったことが起こると、企業経営にとって大きなダメージになりかねません。そうならないために、金銭のトラブルが起きたら即座に行動を起こしましょう。早い段階から、弁護士に相談するのもおすすめです。

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