判決内容を実行するための民事執行とは?
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勝訴しても自動的にお金が入ってくるわけじゃない!
裁判で勝ったのに支払いが…、そんな時には民事執行を
長い訴訟の末、やっと満足のいく判決を勝ち取れた。だからと言って黙って待っていれば、自動的に債権が回収できるというわけではありません。
訴訟はあくまで、主張した権利の有無を明らかにする場。勝訴したとしても、相手が任意で支払いを行ってくれなければ、いつまでたっても債権は回収できないのです。これではせっかく勝訴したのに意味がありません。そんな時、打つべき手立てが「民事執行」です。
民事執行とはどんなもの?
民事執行は、国家権力によって、訴訟で認められた権利を実行するためのものです。お金を貸した人(債権者)の申し立てで、お金を借りた人(債務者)の財産を差押えて換金し、債権者に分配します。手続きには「強制執行」や「担保権の実行」などがあり、これらを総称して「民事執行」と呼びます。
強制執行をするにはどうすればいい?
強制執行とは?
裁判で勝訴したのに相手がお金を支払ってくれない時、裁判所が債権者の申立てにより、強制的に回収をしてくれる手続きのことです。債権者は、不動産、動産、債権どれに対しても強制執行の手続きを取ることができます。
強制執行に必要な3点セット
強制執行の申し立てを行うには、次の3つの書類が必要になります。
1.債権名義
債権の請求権が存在するということを公に証明するもの。判決や和解調書、調停調書などのことです。
2.執行文
「強制執行ができる」ことを証明するものです。裁判所書記官や公証人に申し立て、債務名義正本の末尾に記してもらいます。債務名義正本とは、債務名義と執行文を合わせたもののことを指します。
3.送達証明書
相手が債務名義を受け取ったという証明書です。
これらの書類を用意しつつ、相手の財産も調査しましょう。銀行の預金はもちろん、本社や工場などの不動産、不動産以外の動産、また国債や売掛金などの債権も差押えの対象となります。
不動産に対する強制執行
競売によって不動産をお金に変える
不動産に対する強制執行というのは、簡単に言い換えると競売です。相手の不動産を差押えて競売にかけ、裁判所を通して配当金をもらいます。申し立ては、競売にかける不動産の所在地を管轄する地方裁判所に行う必要があります。
不動産競売手続きの流れ
1.競売の申立て
債権者が裁判所に不動産競売の申し立てを行う。
2.競売開始の決定
裁判所が競売に必要な要件が揃っているかを審査し、競売開始を決定する。
3.現況調査と売却基準価格の決定
鑑定人などが調査を行い、裁判所が売却の基準となる価格を決定。
4.競売
その不動産を購入したい人が希望価格を入札し、最高額をつけた人に売却。
5.代金の納付
落札者が通知された期限までに代金を納付。
6.配当手続や登記の移転
裁判所が所有権移転の手続きなどを行い、債権者に配当の手続きを行う。
不動産執行のメリット
・不動産の所在地さえ分かっていれば、確実に差押え出来る。
・一般的に高価なものが多いので、債権を回収しやすい。
不動産執行のデメリット
・現況調査や鑑定、競売の手続きなどに時間がかかる。
動産に対する強制執行
不動産以外のものを差押さえる
動産と言われてもあまりピンと来ないかも知れません。車のような「動くもの」と考えるよりは「不動産以外のもの」と考えた方がわかりやすいでしょう。申し立てを行った後、債権者が執行人とともに執行場所へ行き、直接希望するものをどんどん差押えていくので、大変スピーディーです。ただ、動産には不動産よりも価値の低いものが多く、債権回収の見込みは立てにくいかも知れません。
動産執行のメリット
・不動産執行よりも迅速に差押えできる。
・執行人とともに直接、執行場所に行くので相手に対してプレッシャーを与えることができる。
動産執行のデメリット
・家具やパソコン、車など不動産に比べると価値が低く、換金に手間がかかる。
債権に対する強制執行
他者への債権や銀行預金を差押さえる
債権とは、相手の銀行預金や売掛金などのことです。債権に対して差押えをする際には、相手の預金や取引などを事前によく調べる必要があります。預金を差押える場合は、銀行や支店名、売掛金を差押える場合は、誰に対するどのような内容の売掛金があるのか、さらに金額や支払期限なども調べておくと、スムーズに手続きを進めることができます。
債権執行のメリット
・競売や換金の手間がなく、スムーズに債権回収ができる。
債権執行のデメリット
・相手の預金口座や売掛金をあらかじめ詳しく調べておかなければならないが、調べにくいことが多い。
「担保権の実行」とは
もともと抵当や担保があるケースで有効
こちらが債権者の財産について、抵当権や担保権を持っている場合、判決などの債務名義なしで、不動産競売の手続きを行うことができ、これを「担保権の実行」と呼びます。
この場合、裁判所に担保権が登記されている登記簿謄本などを提出すれば、すぐに競売に向けての手続きを進めることが可能です。担保権の実行と強制執行は、債務名義が必要かどうか以外に大きな違いはなく、手続きの流れもほぼ同じです。
裁判後を考えて、弁護士に相談を
裁判に勝訴しただけでは、債権回収は終わらない
裁判で勝訴判決を勝ち取っただけでは、実際に債権を回収することはできません。訴訟で認められた権利を執行して、ようやく債権の回収が終了することになります。
確実に債権回収を行うためには、売掛金トラブルが起きたら、迅速に弁護士に相談することが大切。訴訟への対応はもちろん、訴訟後の見通しも含めて専門家のアドバイスを受け、スピーディーかつ適切に手続きを進めてください。
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