下請法とはどんなもの?

下請け注文

公正な取引のために「下請法」を知ろう

下請法とは、大規模な親事業者から、小さな下請事業者を守るための法律です。両社の取引が公正に行われるよう、そして下請事業者の利益を保護するために定められたもので、正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」といいます。

たとえばこんなとき、下請事業者を守るのが下請法です

とある中小企業が大企業から、ある取引を持ちかけられました。中小企業は、この取引を成功させたことにより、安定した経営を実現することができました。

ところが、ある日を境に取引先の大企業から「これからも取引を続けたければ、この商品を購入するように」と言われたり「代金の支払いを3ヵ月後にしてほしい」と言われたりするようになりました。

重要な得意先からの無理な要求にどう応える?

本当は必要のない商品を購入したくないし、代金ももっと早く支払ってほしい。けれどもそれを伝えて、もしこの大企業からの取引がなくなってしまうと、経営が…。

中小企業の経営者の立場であれば、こうしたケースで取引先企業の要求をすっぱり断ることは簡単ではありません。

関係性や立場を利用した不当な要求から下請事業者を守る

悩む女性このように、中小企業が大企業の下請けを行う場合、その大企業との関係が悪くなると、たちまち経営が立ち行かなくなるというケースが多々あります。時には、大企業がその関係性に目をつけ、下請事業者に不当な要求をするかもしれません。

要求に応じない場合は、もう二度と取引をしないと言われたら、どんなに厳しい条件であっても受け入れざるを得ない状況に追い込まれてしまいます。そんな不当な要求から下請事業者を守るのが下請法なのです。

どのような場合に下請法が適用されるの?

下請法の適用は資本金額と取引内容で決まる

下請法が適用されるかどうかは、親事業者と下請事業者の「資本金額」と「取引内容」によって決まります。たとえば、資本金3億円以上の会社が、資本金3億円以下の会社に物品の製造を委託する場合は適用の対象となります。

他にもさまざまな条件がありますが、そもそも小さな下請業者を守るための法律ですから、請負人が注文者よりも小規模な場合にしか適用されません。

子会社と取引する場合にも適用される?

子会社との委託取引にも適用される

子会社とは、親会社がその会社の株式を保有するなどして資本参加していたり、役員を派遣したりすることによって、実質的に親会社の支配を受けている会社のことです。こういった子会社と委託取引をする際にも、下請法が適用されます。

ただし、親会社が子会社の議決権のある株式の50%以上を保有する場合は、適用外となります。これは、実質同じ会社内の取引とみなされるためです。

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また、同じ親会社が議決権のある株式の50%以上を保有する兄弟会社同士の取引にも適用されません。これもまた、実質同じ会社内の取引とみなされるためです。

表

子会社や兄弟会社と取引をする際には、その関係をしっかりと把握しておくことが大切ですね。

下請法を理解し、会社を守ろう

下請法は、小さな下請事業者を守るための法律です。取引先に「この製品の製造を受注する代わりに、こちらの製品の代金を無料してほしい」と頼まれたり、「いつも納入してもらっている商品を安売りしたいから、半額にしてほしい。できない場合、今後の取引は…」などと言われたりしたとき、下請法を知っていれば、「それは違反に当たりますよ」と指摘し、自分の会社を守ることができます。

違反した場合は公正取引委員会からの公表も

また、親事業者側も下請法を知っておくことが大切です。下請法に違反した場合、企業名や違反の内容などが世間に公表されることになります。企業コンプライアンス(法令遵守)が重要視される昨今、下請法に違反することは、企業の価値を大きく落としてしまうことになるでしょう。

親事業者も下請事業者も、互いに自分の会社を守るため、下請法の内容をしっかりと理解しておきましょう。

当事者間での解決が難しい場合は…

早めに専門家にアドバイスを求めよう

  • 「支払日をとっくに過ぎているのに代金を支払ってくれない」
  • 「お客さんからの注文がキャンセルになったからと言って、急に返品してほしいと言われた」
  • 「納入先の会社に棚卸しを無償で手伝うように言われた」

など、これらは全て下請法で禁止されている行為です。

しかし、違反していると分かっていても、今後の取引のことを考えると、なかなか親事業者に言い出せなかったり、当事者同士で話し合っても解決しなかったりすることもあるでしょう。

もちろん、親事業者と下請事業者の間で意見が食い違い、両社の関係に大きな亀裂が生じてしまうことも考えられます。相手が重要な取引先であれば、当事者間で話し合う前に弁護士に相談し、解決に向けたアドバイスをもらうのがベストです。

「違法では?」と思ったら弁護士に相談を

繰り返しますが、下請法は、大規模な親事業者と小規模な下請事業者との取引が公正に行われるため、そして下請業者の利益を保護するために定められたもの。自らの会社を守るためにも、中小企業の経営者はこの法律をきちんと理解し、「違法では?」と思うところがあれば早めに弁護士に相談することが大切です.

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